株式会社dig代表取締役・クリエイティブディレクター
松本知彦Tomohiko Matsumoto
20周年を記念して、代表・松本知彦にインタビューを決行。
これまでの20年、これからの20年、現在の心境……。
今だから話せる“20”のことを語っています。
時が経つのは本当に早いと思います。いろんなことに挑戦してがんばってきましたけど、まだまだやらなきゃいけないことがたくさんあって、もっと頑張らないといけないと思っています。以前は20年続ければ充実感とか自己実現の満足感などが当然あるだろうと思っていました。でも実際に20年経過してみたら、まったくそんな気持ちが起こらないことに驚いています(笑)。
自分がこういう会社だと言うよりも、実際に仕事をさせていただいたクライアントの方々や周りの人にdigという会社にどんなイメージを持っているか質問してみたいですね。自分もそうですけど、私はこういう人ですと言っても、周りの人ってそれとは異なるイメージを持っていたりするもの。それでもあえて端的に言うならば“なんでも諦めずに応えようとする会社”ですかね。
人でしょう。人しかないと思います。スタッフは誰かの役に立ちたいという使命感を持って働いていますし、素直にやりたいことを誠意を持ってやるという気持ちがあると思います。やりたいことをやれる環境って、実は社会では本当に少ないんです。可能な限りスタッフたちのやりたいことをやれる会社でいたいとは思っています。やりたいことをやって結果を出せる会社にしたいですね。
ビートルズの「LET IT BE」というアルバムの中で、ジョン・レノンが喋っていた「Dig it」という言葉からです。じゃあ1曲やろうぜ! みたいなノリの時に使うんですけど、digを始めた頃は、バンドのように専門的な技術を持ちよってモノ作りができたらいいなと思っていて。
とくに理由はないです。30代後半から本当に忙しくて、家が近くにないと厳しい状況が続いていました。だから家(代々木上原)と会社は近くないとやっていけないという必然性があったんですよね。今は違いますけどね。
仕事なら「期待に応えること」。それもプラスαの驚きや新しさをもって応えることです。今までの人生、ずっとそれでした。もうひとつは「他者への愛情を持ち、常に素直でいること」。これは幼い頃に母親に教えらたことで、いつも頭の片隅にあることです。自分自身が幸せでいることのルールのように思います。
バンド活動と絵を描くことです。今回の20周年記念パーティで演奏することになっていて、久しぶりにドラムを叩いたらめちゃめちゃ下手になっていてびっくりしました。
Q7の回答と重複しますが、ここ数カ月は息子とバンド演奏をしたり、絵を描いたりしています。絵を描いてるときは、自分が無になる貴重な時間ですね。
“Not fashion but style.”ファッションそのものにはそんなに興味はなく、スタイルに興味があります。とくに、その人らしい生き方や考え方が表現されたスタイル。自分らしさとは何か? と自問自答をしながら、スタイルのあるファッションを楽しんでいけたらと思いますね。
父親です。10年程前に亡くなっているけど、もっともっと話したかったです。自分は1人っ子だから、他の人に比べると父親と接する時間が少し多かったかもしれませんが、クリエーターの先輩として、同じDNAを持つ数少ない者として、自分の年齢の時に彼が何を考え、何を感じていたのかを時々聞いてみたくなります。今回2人で親子展を開催するのも、彼に会いたいという理由からです。
企業のブランドコンサルティング業務をメインで行っています。
クライアントが求めていることなのか? 先方の要望に先回りして応えているのか? この2点が一番大きいです。第3者の視点を持つことが大事で、いつも自分を客観的に見て判断できるかを考えています。当たり前のことですが、スタッフの提出物をチェックするときも、そこを一番重要視します。
難しいですね……。新しいことに挑戦するときは、必ずリスクがついてくるものです。泣きそうになった修羅場を経験しても、結果的にリスクを取らなかった仕事は、あまり記憶に残っていない気がします。辛くても新しいことをやり切った仕事の方が記憶に残っていますね。1冊丸ごと任せていただいた雑誌「Think!」のアートディレクションやHMVのECサイト構築は今でも印象的です。
ヨゼフ・ミューラー・ブロックマン、モーリス・ビンダー、パトリック・コールフィールド、ドナルド・ジャッド、アレックス・カッツ、ルウ・ドーフスマン、ソウル・バス、リチャード・ノイトラ、ディーター・ラムス、ブルーノ・ムナーリなど。
求められたタイミングで出てきます(笑)。興味があるものや格好いいものだけではなく、普段から何でもないものやくだらないもの、流行っているものなどを脈絡なく集めて倉庫にしまっておきます。何かのアウトプットを求められたときに、倉庫からそれらを出して組み合わせます。アイデアって、言ってみれば経験や体験の組み合わせで、求められたものとはまったく関係のない組み合わせから出てくることが多いんです。
これは新しいテーマというわけではなく、今までの20年の総括の意味を込めて付けました。僕らがやっていることって、すべて企業の魅力作りのサポートなわけです。企業のイメージやスローガンを考えることだけがブランディングではなく、バナーひとつであっても、1ページのデザインであっても、ブランドを作る活動の一部だと思っています。でも、より強いクリエイティブでトータルな結果を出すためには、上流工程から関わっていく必要があります。アイデンティティの構築からアプリケーションまでをワンストップで手掛けることにさらに力を入れていくという宣言ですね。
20年やっていても、次から次へと新たな挑戦が出てきます。そのベースにあるのは、デザインで世の中に貢献したいという常に変わらない想い。テクノロジーはその都度変わって行きますけど、モノづくりを通して社会やクライアント、スタッフを幸せにしたいという想いは、dig設立当初から一度もブレたことはありません。
以前よりもデザインで世の中に貢献できることは増えたと思っています。今後も生活の中で、デザイン的な発想はもっと重要になってくるでしょう。僕たちは、発想力やデザインを仕事にしているプロなわけだから、それを自分たちのために発信していく仕事がしてみたいです。例えば自分たちで手掛けたデザインプロダクツの販売や媒体を作ることですね。
20年の間に、インターネットが進化したり、スマホが登場したり、生活もいろいろ変わったけど、本質的に人の感じ方はそんなに変わっていない気がします。もっと言うとテクノロジーが今ほど発達していなかった時代のアーカイブにたくさんのヒントが隠されていると思うんです。僕たちがすべきことは人の感覚を知ること、そして最新のテクノロジーでそれらを表現すること。だから5年先、10年先も変わらず、新しい技術の登場による人の感じ方を企画やデザインに落とし込んでいると思います。
10年かぁ……まだ元気で働いているかなぁ(笑)。20年続く企業って、日本のすべての企業のうち1桁の割合らしいです。だから30年続かせることは、もっと低い存続率なんでしょうね。でも、10年先がどうなっているかは、自分含め、スタッフ全員がどうなりたいかにかかっている部分が大きい。だからみんなで強い意志を持って、今よりももっといい方向へ変えていけたらと思っています!