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動きを描くこと
初めまして、クリエイティブチームの上井です。
今年二月にdigへ入社し、はや三ヶ月が経ちました。以前は関西におり、dig入社と同時に上京したので、東京暮らしも三ヶ月目です。
まだまだ地方者気分の抜けない私ですが、東京には以前からよく通っていました。その目的のひとつが、西荻窪にある「ササユリカフェ」です。
▼ササユリカフェ
スタジオジブリの元動画検査・舘野仁美さんが2014年末に開店。
アニメーターのつながりを活かし、店内で著名なアニメーターやアニメ作品の企画展を行なっています。
先日、そのササユリカフェで開催されている「二木真希子展」に行ってきました。
二木真希子さんは、テレコムフィルムアニメーションやスタジオジブリで活躍した女性アニメーター。宮崎駿監督作品・ジブリ作品には、原画マンとして約30年間参加。米林宏昌監督作品「思い出のマーニー」への参加を最後に、2016年5月13日、58歳で逝去されました。
動物や自然の描写を得意とする二木さんは、みなさんの記憶に色濃く残るカットの原画を担当されています。
・「となりのトトロ」ドンドコ踊りと発芽~大樹の出現、トウモロコシ収穫〜キュウリを食べるカット
・「魔女の宅急便」冒頭の草むらでラジオを聴くキキ、雁の群に遭遇するカット
・「もののけ姫」アシタカを池に運ぶサンとヤックル、アシタカの前に現れるシシ神 など
風がよく通るテラスで食事をいただきながら、パラパラ原画や挿絵の数々をじっくり拝見する昼下がり...。
二木さんの仕事は、文字をいくら書き連ねてもお伝えできるものではないことを、実際のお仕事を手に取って改めて痛感しました。今回の展示は残念ながら撮影禁止とのこと。みなさんにはぜひ生で見てほしい!
「崖の上のポニョ」では、リサが運転する車を追いかけるポニョのパートを担当した二木さん。13秒に渡る長尺カットは二冊の分厚いパラパラ原画にまとめられ、実際の動きを楽しめる展示方法になっています。
「もののけ姫」ではシシ神が踏みしめた草木を複数のセル(photoshopでのレイヤーのようなもの)に分け、草の一本一本を動きも方向もバラバラに動かすという、目の眩むような細かい作業が垣間見えるカットも。
二木さんは魅力溢れる動物や自然の表現を、児童文学・絵本の世界でも発揮しています。この企画展では、二木さんのアニメーターとしての活躍だけでなく、作家・イラストレーターとしての顔も見ることができるのです。
アニメ制作のスタッフはどんな仕事をしているか、詳しく知る人は多くないでしょう。アニメスタッフと聞いて浮かぶのは、監督・脚本家、せいぜいキャラクターデザイナーまでかもしれません。しかし、デザインの仕事と同じように、アニメ制作にもさまざまな業務に携わるスタッフがたくさんいます。
テレビやスクリーンに名前が出てもあまり知られない、表舞台にもほとんど出ることのないアニメ制作スタッフ。けれどみなさん必ずどこかしらでその仕事ぶりを見ています。
ササユリカフェは、そんな「アニメ制作スタッフ」の存在を間近に感じることができるカフェなのです。
ササユリカフェの「二木真希子展」は5月29日まで。
6月1日からは「LUPIN THE ⅢRD 血煙の石川五ェ門・テレコムスタッフの手仕事展」が開催されるとのこと。
入場料は食べ物やドリンクの1オーダー。オーナー自慢のカレーやおいしいスイーツ・コーヒーをお供に、ぜひアニメ制作の世界に触れてみてください。
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▼ササユリカフェ
JR中央線・総武線 西荻窪駅から徒歩3分
http://sasayuricafe.com/
▼ノリタケとジブリのコラボ「となりのトトロ イヤリープレート」のイラストも担当された二木さん。
歴代のイラストと座談会の様子が、三鷹の森美術館サイトで公開されています。