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変わりゆく渋谷、変わるブランドのDNA

仕事
Feb 28,2023

渋谷は今、100年に1度の再開発ということで、どんどん街の様子が変化しています。

スクランブル交差点の真下にフードコートができてるなんて、皆さん知ってましたか?

大量の人が行き交う駅前のスクランブル交差点は通行止もせず普段の日常のまま、一方その真下の地下では工事をしていたなんて、いやあ日本の技術はスゴイっすね。

地下鉄のように何十メートルの深さではなく、地上から階段で降りた10メートルくらいの場所を掘って広いフードコートを作るなんて、、、、大丈夫なんだろうか。

江戸時代まで、海の底だった渋谷のスクランブル交差点

そのことを考えると、砂地の海底をさらに掘って(しかも浅い)大空間を作るなんて、大丈夫なのだろうかと心配なります。

子供の頃からずっと慣れ親しんできたこのロゴともお別れです
これからできる渋谷サクラステージをはじめとして、渋谷フクラス、渋谷ストリーム、渋谷スクランブルスクエア、宮下パーク、パルコ、ヒカリエ、、、
その一方で、昔から続いていた庶民的な小さな飲食店は次々閉店しており、悲しい限りです。
100年に1度の再開発はよいけれど、昔からの文化も残しながら新しい要素とミックスできないもんですかねぇ。
明治通り沿いの細い飲兵衛横丁を壊さずに残したのはエライ、というかホッとします。
そして街が次々と新しくなっていくのと反比例して、渋谷に行く人がどんどん少なくなっているのは皮肉ですね。
現地で人がいないことを体現できるくらいなので、明らかに減少しているのだと思います。
センター街を進んで東急ハンズまで、公園通りを上にあがったパルコまで、百貨店の西武を過ぎて丸井の脇の道を進み消防署がある通り手前のニトリまで、それらの道の先は以前に比べて人がいなくなりました。
そして原宿と渋谷を結ぶキャットストリートもガラガラです。
駅から少し離れたところでは、空いている店舗が目立ち、明らかに人が減っているのがわかります。
同じように駅から少し歩かなければならない場所にある東急本店も、KOEホテルも閉店してしまいました。
観光客相手のKOEは別にいいけど、東急本店の7階にあった本屋がなくなったのは痛いです・・・
新しいハンズのロゴです
そしてとうとう東急ハンズもなくなってしまった。
正確に言うとなくなってはいませんが、経営が変わって東急ハンズという慣れ親しんだ名前は消滅しました(まだ渋谷店は東急ハンズというサインのままですが)
1976年に東急不動産が「手の復権」手を通じて新たな生活・文化を創造しよう、をコンセプトに創業した東急ハンズは、ホームセンターで知られるカインズに買収されました。
このニュースで、東急ハンズが2022年には47億円の赤字で、経営危機に陥っていたことを知り、衝撃を受けるのです。
店員の商品知識が素晴らしくて大好きだった東急ハンズ。
高校生の時に最上階にあったカレーのボルツでよくデートした東急ハンズ。
子どもたちの夏休みの自由研究の材料を毎年買いに行った東急ハンズ。
イベントの時に、パーティグッズを買いに行った東急ハンズ。
これからは「東急ハンズ」の名前はなくなり、ブランド名は「ハンズ」になります。
そのためロゴが変わり、全国の店舗サインやショッパーもすべて変更に。
従来のハンズグリーンは変えず、漢字を途切れることのない一筆書きで
コンセプトも変更になっています
ブランドスローガンも変更になりました。
1976年に東急不動産が提唱した「手の復権」から、スローガンは「手でソウゾウしよう、手でワクワクしよう。」に変わりました。
1976年の誕生から続いた「手」のコンセプトだけは残し、名前も「ハンズ」に生まれ変わったわけです。
ロゴマークにもそのコンセプトが視覚化されています。
原点である手のモチーフはそのままに、日本発ということで漢字を採用、途切れることのない一筆書き。
ちなみにこのロゴのデザイナーご存知ですか?
nendoを主宰する佐藤オオキさんですね
このロゴがいいのか、悪いのか、今判断するのは性急ですが、意見は分かれるところでしょう。
個人的には昔のロゴの方がベタだけど、強くてストレートで好きです。
うーん、、、慣れていないせいか、細い書体はなんだかしっくりこないですよね・・・・
佐藤オオキさんは、元々グラフィックデザイナーではありません。
早稲田の理工学部出身で、建築やプロダクトデザインが専門です(東京オリンピックの聖火台とか)
ですが、ここ最近グラフィックの仕事が目立ちます。
みんながよく知っているのは、ローソンのグラフィックデザインでしょう。
2年くらい前に、ローソンが扱うプライベートブランドのすべてのパッケージのリニューアルを担当しました。
これが色々な意味で、結構な話題になりましたね。
その少し前に同じく、セブンイレブンのPBプランドのパッケージを全部変更した佐藤可士和の仕事と比較されました。
個人的には同じ佐藤でも、この2人の視点がまったく違っていることが面白かった。
並べるとより明確になるコンビニ2社のデザインアプローチの違い
たぶん世代でも、どちらを支持するかが異なるようにも感じます
セブンは、全ユーザーに対して、店内における商品の在り方をテーマにしているのに対し、
ローソンは、リピート顧客に対する、自宅での商品の在り方に着目している(あくまで松本フィルタです)
簡単に言ってしまうと、セブンイレブンはパッケージに、大きくて太いゴシック書体を用いて、誰が見てもそれだとわかる情報(すごくベタだけど、ストレートでわかりやすい)それと写真によるシズル感の訴求で視覚的にも理解しやすいインターフェイスを採用しています。
ローソンは、セブンとはまったく逆に、商品名の表記には細い明朝体や手描きフォントを用いて、視覚的な訴求も写真ではなくイラストを使っているためシズル感はありません。
商品すべてにベージュを用いて、共通したデザインフォーマットで商品を統一している。
これがわかりにくい、また無印良品との類似性の指摘を受け、賛否両論となりました。
ローソンの評価を知ってか知らずか、セブンイレブンは再リニューアル
ローソンのリニューアル(の評判)を見たセブンイレブンは、すぐさまパッケージの再リニューアルを行い、さらに商品名の書体を太く、大きくしました。
より見やすくなりましたが、よりベタになったことは間違いないです。
皆さんは、ダブル佐藤の異なるアプローチについて、どう思われますか?
どちらがよいと思います?
言い方を変えると、どちらが自分の生活にフィットすると思いますか?
そもそもコンビニの商品なんて同じだから、どっちでもいいという意見もあるでしょう。
あなたはどちらに同意するでしょうか?
インサイトを探す。
小売りにおけるインサイトとは、消費者の購買動機のことです。
潜在ニーズのさらに奥、自分が認識もしていない状態のニーズのことをインサイトと言います。
現代の日本は、マズローの欲求5段階説のうち、社会的欲求、承認欲求を超えて5段階目、自己実現欲求が商品購入のトリガーになっていると言われています。
この商品を持つことで私は自分らしい自分になれるだろうか?自己実現ができるかどうかの判断がその商品を買うかどうかの決め手になる。
それを消費者は無意識のうちに商品から感じ取っているというわけです。

それはコンビニの商品に当てはまるだろうか?
機能性のみでよい、自分らしさなどコンビニの商品になんて求めない、などなど
判断は人によって異なるでしょう。
一方でいつも行く店舗だからパッケージデザインは判別がつくし、慣れれば多少わかりにくのは気にしない。
店で選びやすいというメリットより、自宅の冷蔵庫や食卓、日常に情報のノイズがあるのは嫌だ。
少数であっても、確実にそのように感じる人はいるのではないでしょうか?
これがインサイトに成り得るか?その結果はこれから出ることでしょう。
店の棚で主張するセブン、一方で家庭内での視覚情報の在り方に着目したローソン
エクストリームユーザー(極端なユーザー)に着目すべきだと言われる現代のマーケティングにあって、ローソンのアプローチは決して悪くないと個人的には思います。
むしろセブンイレブンと同じアプローチを採らなかった姿勢を称賛したい。
今のローソンは、似ている2種類のパッケージ商品が主力です。
ただ1点、昨年ローソンの竹増社長が会見を行って「無印良品の世界観をコンビニで」というワードを発言されました。
これを聴いて自分はちょっとびっくりで…
以前ファミリーマートで販売されていた無印良品が、今はローソンで販売されるようになりました。
以前競合で扱っていて終了した商品を、同じ業態で扱って結果が出るのかなということは気になります。
デザイン面でも佐藤オオキの手掛けたデザインは、ただでさえ無印とパッケージが似ていると指摘されていたのに、今は同じ店舗内で似たようなパッケージの商品が複数置いてあるのは若干の違和感ありますね。
カレーとか、デザインかぶってますし。(無印のカレーは大好きなのでコンビニで扱ってくれるのは嬉しいけど)
ローソン、サインはブルーなのに、いま店内はベージュが多くなってます笑

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デザインは消費のインサイトに成り得るか?
https://www.dig.co.jp/blog/danwashitsu/2022/10/post-134.html

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https://www.dig.co.jp/blog/danwashitsu/2022/11/post-139.html

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松本知彦 Tomohiko Matsumoto

東京新宿生まれ。
漫画家の父親を持ち、幼い頃より絵だけは抜群に上手かったが、
働く母の姿を見て葛藤し、美術を捨てて一般の道に進むことを決意。
しかし高校で出逢った美術の先生に熱心に説得され、再び芸術の道に。
その後、美術大学を卒業するも一般の上場企業に就職。
10年勤務ののち、またしてもクリエイティブを目指して退社独立、現在に至る。

  • 趣味:考えること
  • 特技:ドラム(最近叩いていない)
  • 好きなもの:ドリトス、ドリフターズ、
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