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「岸辺露伴は動かない」脚本が良くなければ心も動かない

映画
Jun 29,2023

いやー、めっちゃ間が空いてしまいましたね。。。。

ちょっと仕事が立て込んでしまって、この談話室が更新できなくなってしまいました。

こんなに間が空いてしまったのは、談話室を開始から初めてです。

20年続けてますが、、、、(長い!!)

NHKのこのドラマ、放映の時欠かさず見て、サブスクでもさらに見て
その理由は、もちろん仕事が忙しくなったというのもありますが、
1. 大学の授業が毎週金曜に始まった
2. 毎週月曜社内でスタッフ全員にクリエイティブの話をすることにした
3. 1の資料は200ページ、2の資料が30ページ、毎週作らねばならず
それで、まったく時間が取れなくなってしまったという経緯です。
いや、人に教える、気づきを与えるって、自分のためでもありますが、本当に時間がかかる大変な作業です。

さて久しぶりになりましたが、気を取り直していきましょう。
以前、この談話室で、シン仮面ライダーの話をしました。
映画のシン仮面ライダーは、今TV番組でやっている仮面ライダーではなく、藤岡弘が演じた本郷猛 が変身する初代仮面ライダーを元にしています。
キャラクター誕生50周年の節目に、初代仮面ライダーを現代に蘇らせたストーリー。
シンエヴァンゲリオン、シンゴジラ、シンウルトラマン、そしてシン仮面ライダー。
どれも、庵野監督のカルチャーへの並々ならぬ愛情が感じられて良かった。
ストーリーが面白いというものありますが、クリエイティブの視点でこれらの映画を見ると、また感慨深いというか、同じクリエーターとして敬服するところがたくさんあります。
20歳の大阪芸大の頃から、ダイコンフィルムで既に頭角を現していた庵野監督の才能がスゴイ。
(庵野監督がめちゃ影響を受けて引用している「沖縄決戦」は隠れた名画ですから是非そちらも)
https://www.dig.co.jp/blog/danwashitsu/2023/03/3-4.html
https://www.dig.co.jp/blog/danwashitsu/2022/05/post-124.html
シャーロック。左側の人が脚本を書いて、シャーロックのお兄さん役を演じてます。
今回も同じように、クリエイティブの視点でこの映画を見たら面白いよという話です。
僕は10年くらい前にNHKで放映されていた、イギリスBBCが制作した連続TV番組「シャーロック」が大好きでした。
カンバーバッチが扮するシャーロック・ホームズがもし現代にいたら、きっとこんな探偵になっていただろうというお話。
コナン・ドイルの原作をほぼそのまま現代に当てはめているんですが、現代の最新機器を駆使して事件を解決していくストーリーは、ハリウッド映画のような派手さはないけれど、なんともイギリスらしいクールな内容で大好きでした。
DVDのBOXも買って何度も見ました 笑
今ならサブスクで見られるので、是非みんなに見て欲しいです。
何がいいのか、自分なりに考えてみたんですが、やっぱり脚本の力にあるという結論です。
大枠のストーリーは原作から逸脱せず、出てくる登場人物や事件を現代に置き換え、原作にない様々な魅力を加えて、登場人物に人間らしさを与えているのは、脚本の力だと思うんです。
脚本を書いているのは、シャーロックの兄役を演じている俳優で、自ら出演もしています(しかも重要な役)
彼の書いた脚本がすごく面白いんですね。
テレビや映画に限らず、漫画もそうですが、原作という制約がありながらも、それを面白くできるかどうかは、原作よりも脚本の力に他ならないと思います。
アカデミー賞を受賞した日本映画「ドライブマイカー」だってそうですよね。
https://www.dig.co.jp/blog/danwashitsu/2022/02/drive-my-car.html
高橋一生演じる岸辺露伴は、まるで田村正和が演じた古畑任三郎のよう
第2回放送のくしゃがらは、森山未来の演技も相まって一番記憶に残るストーリー
結婚してファンは減ったかもしれないけど、中村倫也の甘い演技は第3話
地上波で再放送はもうできない?猿之助のスゴイ芝居。いいです!
前置きが長くなりましたが、シャーロックと同じく、NHKで去年の年末まで放映されていた「岸辺露伴は動かない」が自分は好きなんです。
言うまでもなく、荒木飛呂彦原作「ジョジョの奇妙な冒険」からのスピンオフ同名傑作漫画の映像化です。
全7話ありますが、アマプラで全部見られるので是非見てください。
おススメは、森山未来が出てくる第2話 「くしゃがら」 
中村倫也の生い立ちにスポットを当てた第3話 「D.N.A」 
そして、市川猿之助の怪演が光る第5話 「背中の正面」 
番組制作と同じスタッフによる映画も良かったなー
NHKのTVシリーズと同じスタッフで制作された映画「岸辺露伴 ルーブルへ行く」を先月見てきました。
「ジョジョの奇妙な冒険」の映画実写化は、なんだか微妙な内容だったけれど、TVアニメ版は面白かった。
それはアニメ版の方が漫画に近いからだよ、と言う人もいると思いますが、それが理由なら「岸辺露伴は動かない」が面白いという理由にはならない。
なぜだろう?というのもあとでわかるのですが、TV版の「岸辺露伴は動かない」が面白いのには2つの要素があると思います。
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脚本:小林靖子 
音楽:菊地成孔
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この2人が素晴らしいんですね。
菊地成孔はJAZZの人だけど、ラテン調で無国籍で不思議な音楽がいい。
そして何と言っても脚本。
小林靖子は、仮面ライダーのほとんどの作品の脚本家として、その筋では知られた有名な人です。
アニメ版のジョジョの脚本も彼女。
そして実写版は彼女の脚本ではないということ。その差です。
「岸辺露伴 ルーブルへ行く」でも小林靖子の才能が光っています。
見どころは、ルーブル美術館を貸し切った撮影ロケ。
さすが国営放送NHKって感じです。
ルーブル内部を映画館の大画面で見ると迫力あります。
モナリザの前で演技してる日本映画ってなかなかないんじゃないでしょうか。
映画を見た後、さっそく単行本を買ってみました。
映画を見た後、原作も買って読んでみました。
マンガ作品は、ルーブル美術館からの依頼で、館内での展示を目的として描かれたものなので、フランス人たちにアプローチする日本的要素が多く入っています。
黒髪とか、着物とか、古い旅館とかね。
ルーブルをテーマに描くことが条件の依頼だったので、当然ルーブルが出て来ます。
マンガは15分で読めますが、そのストーリーを1時間半にしても飽きさせないっていうのは、前述の通り、小林靖子の脚本の力だと思いますね。
そしてテレビ版同様、原作のオリジナルに沿ってストーリーが構成されています。
ただ原作と映画では構成の順序が異なっていますが。
シャーロック同様、原作のストーリーからは逸脱せず、そこに様々な要素を肉付けしている。
面白くなるかどうかを決めるのは脚本=ストーリーの力に他ならないと思いました。
なんだよ、このポーズ。ルーブルにある彫刻、ミケランジェロの奴隷のポーズですよ!笑
自分の仕事に当てはめて考えたら、ブランドのクリエイティブワークも、いかにストーリーを語れるか?だと思います。
クライアントへの提案書もそう、ブランドのクリエイティブワークもそう、
そこにストーリーがなければ、岸辺露伴同様に、人の心も動かせない。
みんなはストーリーを語れますか?

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松本知彦 Tomohiko Matsumoto

東京新宿生まれ。
漫画家の父親を持ち、幼い頃より絵だけは抜群に上手かったが、
働く母の姿を見て葛藤し、美術を捨てて一般の道に進むことを決意。
しかし高校で出逢った美術の先生に熱心に説得され、再び芸術の道に。
その後、美術大学を卒業するも一般の上場企業に就職。
10年勤務ののち、またしてもクリエイティブを目指して退社独立、現在に至る。

  • 趣味:考えること
  • 特技:ドラム(最近叩いていない)
  • 好きなもの:ドリトス、ドリフターズ、
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