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ごめん、良い展示、知らせるのが遅かった!

クリエーター
Jul 04,2023

先週末まで六本木で開催していたとてもよい展示がありました。

4ヵ月間も開催していたんで、まだ大丈夫だろなーと思ってたら終わってた、、、w

いやー、知ってたら行きたいと思った人たち、たくさんいたと思うんだけどなー。

21_21は時々すごく良い展示をするので、要チェックです。

終わってしまったけど、よかったんで是非紹介しますね。

いやぁこれまた良い展覧会だったわけです。
展覧会のタイトルは「The Original」
チャットGPTをはじめ、多くのAI生成アプリが出現し、いまオリジナルが問われる時代に突入しています。
作家が作った成果物をAIに学習させれば、自分が手を動かさなくても、また発想しなくても、類似した表現での制作は可能になった。
しかもその著作権は今のところグレー。
今までピクシブで作品をたくさん発表していた作家たちは、今こぞって自分の作品を削除していると聞きます。
それはもちろん、公開した自分の作品をDLして、AI生成アプリに読み込ませるための「素材」として誰かに利用されるのを避けるためです。
そんな中でオリジナルとは何か?を問うという、まずテーマ自体が非常に興味深い内容です。
気を許していたら先週で終わってしまいました・・・
AI生成アプリが出現するずっと以前から、デザイン・クリエイティブ全般には、着想、触発という概念があります。
それらの行為は、決してAI生成アプリが行うような表面的なものではありません。
多くのデザイナーを触発するような、根源的な魅力と影響力を備えた成果物、そのエッセンスを後にまでつなげていくための発見だと解釈できます。
この展覧会は、著作権の概念を前提として成果物のオリジナル性を問うものではなく、後者に書いたような、過去に作られた時代のマスターピースを一堂に集め、オリジナルに触れる機会を持つことで、それらに触発されて制作に向かって欲しい、という内容だと思います。
従前からのクリエイティブな活動自体が内包している発見から触発~制作活動へ。
そのマッチングの場を与える展示だと理解しました。
今一部の女子たちの間で激アツのこちらの椅子も。
自分も常に会社でも伝えていることですが、過去にこそクリエイティブのヒントがある。
それらマスターピースが持つ頂点としてのクリエイティブの力に触発され、感化されて、次の時代の新しいクリエイティビティに活かすこと。
マスターピースが作られた過去とは異なる、新しい現代のライフスタイルや時代が求めることに合わせて、デザインをマッシュアップすることが必要だと強く感じます。
そのために「The Original」を辿ることが必要なんです。
そういう意味では展示の企画内容、タイトルを聞いただけでも共感する展示だろうと思っていました。
自分はこのことについて、10年くらい前に読んだジョン前田の書籍から、あるいはブルーのムナーリの「モノからモノが生まれる」から学びました。
「保存されるべきものはモノではない。むしろそのやり方であり、企画を立てる方法であり、出くわす問題に応じて再びやり直すことを可能にさせる柔軟な経験値である」
ムナーリのこの言葉は、今回の展覧会にズバリだと思います。
この機会に興味があったら「モノからモノが生まれる」も是非読んでみてください。
自分が読んだのは結構前ですが、参考になりました。
見る前からそんなことを感じていましたが、実際に見てもやっぱり良い内容だなと。
企画原案が深澤直人という時点で、ある程度予想していましたが。
マスターピースのデザインの展示と言っても、V&Aのように博物館で展示されているようなプロダクトは1つもない。
すべて購入できる製品しか展示されていないのがユニークでした。
すべてがプロダクトを販売しているメーカーの協賛で成立している 笑
この点も、とてもいいですね。
そして、国や時代、デザイナーを超えて、これだけ多くのマスターピースの作品を比較しながら一か所で見られるというのも、なかなかないのじゃないかと思います。
マリオ・ベリーニやシャルロット・ぺリアン、マルセル・ブロイヤーのミッドセンチュリーの椅子、みんな知っているスイス人ハラーによるシステム収納、ポストモダンからインゴ・マウラーのライト、北欧ではアアルトの花瓶や照明器具、我が国からは深沢直人の名品HIROSHIMA、柴田文江の体温計、倉俣史朗のライト、グラフィックから細谷雁のカロリーメイトまで。
僕の大好きなディーター・ラムスの電卓や棚も展示されていた。
ミッドセンチュリーから現在まで色々なプロダクトを展示。
それ以外にも
今インテリア系インスタ女子に人気大爆発のパントンのテーブルライト、THONETのダイニングチェア214。
この2つに、モンステラを組み合わせたら、そのまま映えのインスタ画像完成という、デザイン軸だけでなく、そんなSNSトレンドもきちんと押さえているところがさすがでした。
もちろんインテリア好きな20代女子の代名詞HAY(ショッパーだけか?笑)のプロダクトもしっかり展示されてました。
ラムスがデザインした棚はサイコーです。
デザインのマスターピースから触発されるという、クリエーター向けだけの展示ではなく、インテリアに興味がある人なら誰でも楽しめる内容でした。
「デザインのマル秘展」←マジ神、「デザインの解剖」「デザインあ」など最高の展覧会を開いてきた21_21ならではの切り口、らしい展示です。
これは学芸員ではなく、実際にモノづくりを手掛ける大御所クリエーターたち自身が企画~キュレーションを行っているからにほかなりません。
その意味では、先に紹介したムナーリの言葉を地で行くのが、このミュージアムの一番の良いところであり、他の美術館との最大の差別化になっているでしょう。
ツボを知ってるので、深い共感があります。
忘れるところでしたが、今はジャン・ヌレの椅子も欠かせないでしょう。
とはいえ、紹介が遅れてしまい、、、みんなに紹介するのがすっかり遅れてしまいました。
よい情報はもっと早く伝えないと意味ないですね。
今回は、せめて画像とテキストで楽しんでください。
今月のカーサブルータスの最新特集「居心地のいい家具」と一緒に見てもらえればと思います。

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松本知彦 Tomohiko Matsumoto

東京新宿生まれ。
漫画家の父親を持ち、幼い頃より絵だけは抜群に上手かったが、
働く母の姿を見て葛藤し、美術を捨てて一般の道に進むことを決意。
しかし高校で出逢った美術の先生に熱心に説得され、再び芸術の道に。
その後、美術大学を卒業するも一般の上場企業に就職。
10年勤務ののち、またしてもクリエイティブを目指して退社独立、現在に至る。

  • 趣味:考えること
  • 特技:ドラム(最近叩いていない)
  • 好きなもの:ドリトス、ドリフターズ、
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