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あなたの会社はなぜ存在するのか? 1

仕事
Mar 26,2024

今回は久しぶりにブランド構築の実績について紹介したいと思います。

最近うちの会社では、企業ブランディングの仕事が増えており、社会の中でブランドに関するニーズが高まっていることを肌で感じています。

以前ブランド構築と言えば、CI専門の会社が担当するのが普通でした。

でも時代は変わっています。

企業のブランディング、あるいはリブランディングに取り組むことは、CIを変更することではありません。

キービジュアルの策定も企業にとって重要な課題です
企業のブランディングをサポートする会社は、業務内容にブランド構築を謳っている企業ですが、その中でもいくつかの専門分野に分かれています。
広告代理店、上流に強いコンサル系、開発から制作まで手掛けるクリエイティブ系、研修などインナー定着に強い会社。
私たちは3番目のクリエイティブ系に属していると思います。
ですから、コミュニケーションツールの制作までを社内で制作している事例がほとんどです。
ブランド開発からアウトプット、ツール展開まで、ブレずに実現できるというメリットがある反面、ブランド浸透の研修ワークショップなどはあまり強くないと思います。

今回紹介するのは、ほぼ1年間に渡るプロジェクトです。
クライアントは、愛知の豊橋に本社を置く株式会社プラネットという企業。
お問い合わせいただいた後に来社、そこでうちの会社の取組方針やブランドについての考え方を数回説明させていただき、ブランド構築業務を発注いただきました。
プラネットは、グリーンアメニティの会社として、オフィスや商業施設に植物を提供し、施工~メンテナンスまでをトータルに手掛けてきた会社。
その中でも、ハイドロカルチャーと呼ばれる土を使わない植物を今後の主力として全国に広げていきたいという想いを聞かせていただきました。
全国に4か所ある自社農園でハイドロカルチャーを生育し、それを用いた室内緑化のシステムを国内で唯一持っていながら、現状ではその多くが世に名前が出ない仕事であること、ハイドロカルチャーより安価という理由で、土の植物提供も依頼されるケースがあるという現状も伺いました。
土で育てる植物の取り扱いをやめて、100%ハイドロカルチャーだけを扱う自立した企業になりたい。
それが初回からお聞きした内容でした。
うちの会社で通常業務として行っているブランド開発プロセスです。
空気浄化、清潔、長持ちなどの特徴を持つハイドロカルチャーは、室内で過ごす人の健康維持に関して、土の植物よりも効果が高いことがデータで発表されています。
メリットはそれだけではありません。
水だけで育つハイドロカルチャーなら、メンテナンス業務が楽で、ナレッジを提供すれば、土の植物と違い、ある程度誰でも維持管理することが可能です。
プラネットは、グリーンメイツと呼ばれる人たちを組織し、現地採用スタッフによるハイドロカルチャーのメンテナンスをデジタルデバイスを通して、本社で遠隔管理する独自のシステムを開発しています。
これにより、それまで当り前だった業務=遠隔地であっても社員が現地に赴いて直接メンテナンスする仕事をなくし、労働集約型からナレッジ集約型に社内を変えいくことができる。
そのためには、まずハイドロカルチャーの優位性を示すこと、自社に蓄積されたエビデンスを発信すること。
プラネットに必要なことは、それまでのプロダクトアウト型のグリーンアメニティビジネスの会社から生まれ変わり、社会にイノベーションを起こす企業として、その志を明確に宣言することでした。
そのために、社内社外を巻き込み、多く人たちが共感できる理念をつくり直す必要があったんです。

最初にお話を聞いた時には、自然という情緒価値に頼ってきた園芸業界の古い体質、その中で、真面目に愚直に土を使わない植物の開発に向き合ってきたプラネットという会社の優位性が社会にあまり認知されていないことに対して、本当にもったいないという印象を持ちました。
これを社会に伝えることができれば、多くの人から共感が得られる、そのポテンシャルは30年以上に渡り、ハイドロカルチャーの研究を続けてきたプラネットの実績に、既に備わっていると感じたんです。
サスティナブル、健康経営、カーボンニュートラル、パッシブデザイン、バイオフィリアなど、社会は以前よりも環境に配慮する意識が高まっていることも、そう思わせる背景にありました。
あとは、時代にあった見せ方と社内の意識改革が課題だと。
01のブランド調査フェーズでは、メンバーと経営層へヒアリング行ないます。
私たちがまず最初に行ったことは、プロジェクトメンバー5名の方たちへの個別の意識調査です。
こちらからの質問に回答いただく形で、1人一人丁寧にヒアリングを重ねていきました。
企業の強み、顧客がプラネットに求めるもの、競合との差別化、それらを明らかにし、共通する重要なワードを抽出して未来のあるべき姿、今ある企業のDNAを言語化していく作業です。
最後に代表の大林社長と荒木相談役からお話を伺いましたが、プロジェクトメンバーの方々と考えられている内容に相違があり、検討が必要なシーンがありました。
今思えば、この検討の時間がプロジェクトの山場だったように思います。
異なる意見があったからこそ、よりゴールが鮮明に見えてきた。
解像度が一気にあがりました。
これがなければ、思考は深まらなかったと今では思います。
やはり経営層の方たちへのヒアリングは不可欠だということも改めて再認識しました。
02の戦略立案では、様々な調査からブランドコンセプトを組み立てます。
社内におけるこの意見の相違を見ていて、私たちは自社のビジネスモデルを社員にわかりやすく伝える資料の必要性を感じました。
社内での認識の齟齬をなくし、社員の皆さんが今後の自社の事業について理解を深めてもらうために活用する資料を制作しました。
これは経営層と社員全員の意見を一致させ、会社が1つの方向へ向かうための目的で作成したものです。
ブランド調査とコンセプト立案から、パーパスの策定またその視覚化に着手します。
ブランド対象者のメインは誰なのか?
ブランディングのゴールはどこか?
それらを繰り返し考えること。
私たちがプロジェクトに着手する前から、プラネットには「みどりを力にする会社」という企業理念があり、他にもビジョン、バリューが定義されていました。
ミッション、ビジョン、バリュー以外に、ステートメントを新たに策定しましょう、という前提でプロジェクトはスタートしたのですが、途上でパーパスの定義の必要性をこちらから提案しました。
それは「みどりを力にする会社」というミッションワードだけでは、プラネットの未来を語れないと感じたことが大きいです。
ハイドロカルチャーで世の中を変えていく会社でなければならない。
「みどりを力に」という表現では、今までと変わらず土の植物も含めすべての植物を扱うことを指している。
一方で「ハイドロカルチャー」という言葉を使っても、一般の人にはわかりにくいという課題認識もありました。
ナレッジをコアとしたトータルハイドロソリューションの概念図(初回提案)
プラネットが提供する価値はハイドロカルチャーそのものではなく、ハイドロカルチャーに関わるすべて、植物の開発、空間の設計施工、設備、管理運用までのトータルなナレッジであるべきではないのか。
その提供にこそ価値がある。
そう考えて、ナレッジをコアとしたトータルハイドロソリューションシステム(のちにハイドロカルチャーソシューションシステムに変更)というサービス名を考案し、誰でもがその強みを理解できるようグラフィックで視覚的に提案しました。
そして、プラネットはなぜハイドロカルチャーを社会に普及させるのか?ということを自ら問い、その問いに対して全社員が揃って同じ回答ができるよう、パーパスを考案しました。

「根からはじまるイノベーションでWellbeingな社会を創造する。」
そのためにプラネットは存在する。
根からはじまるイノベーションによって、Wellbeingな社会を創造するためにプラネットはある。
これがプラネットが社会に存在する意義であり、「なぜするのか?」に対する回答として定義した企業のパーパスになります。
企業が社会に存在する理由を定義したパーパス
VISION
「ハイドロカルチャーと人の共生を常に考え、室内空間のスタンダードを提供する先駆けであり続ける。」
これが企業がありたい姿を明確化したビジョンです。
組織がなりたい姿を定義したビジョン
パーパスステートメント
「根からはじまるイノベーション」
パーパスを短く言語化してまとめたステートメント(声明)です
私たちの信念を言葉で表したストーリーも策定しました。
ハイドロカルチャーは土の植物と何が違うのか?
ヒアリングの中で何度も「ハイドロは根がよく張る」という言葉を耳にしました。
根が張るソイル(土に代わる培地)を用意する、そこに根がよく張るからこそ葉が育ち、空気の浄化機能、保湿機能が土より高いオリジナルのハイドロカルチャーが生まれる。
水耕栽培だから手入れが簡単で清潔、廃棄物のないサステナビリティな室内緑化の実現が可能、結果として社会課題の解決に貢献できる。
これら一連のサイクルのルーツは、まさに長年に渡る「根」の研究にあると思ったんです。
根の持つ植物の根源的な力が、社会の役に立つ。
根がよく張るハイドロカルチャーだから、それが実現できるのです。
植物の根に着目することこそが、健康、環境という社会課題の解決につながる。
小さな根からイノベーションを起こし、大きな社会課題の解決に貢献する。
その先には人々のウェルネスの実現があります。
この考え方をパーパス、ストーリー、ビジョン、ステートメント、そしてPlanet Way(バリューに該当)に共通で定義しました。
ロゴとタグラインを兼ねるパーパスステートメント。
今回紹介したのは、プロジェクト受注からパーパスの定義までです。
ここまで辿り着けたのは、多くのヒアリングの中に答えがあったからに他なりません。
私たちが行っている業務は、本人たちは自覚していないかもしれないけれど、発言の中に無意識のうちに出てくる本当の答えを選び取って調整していく作業に近い。
その意味では、「つくるのではなく、見つけ出す仕事」とも言えるでしょう。
さぁ、ここまででプラネットのパーパスの定義は完了しました。
次に企業の「らしさ」を視覚化するフェーズに入ります。
ここからは次回お伝えしますね。

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松本知彦 Tomohiko Matsumoto

東京新宿生まれ。
漫画家の父親を持ち、幼い頃より絵だけは抜群に上手かったが、
働く母の姿を見て葛藤し、美術を捨てて一般の道に進むことを決意。
しかし高校で出逢った美術の先生に熱心に説得され、再び芸術の道に。
その後、美術大学を卒業するも一般の上場企業に就職。
10年勤務ののち、またしてもクリエイティブを目指して退社独立、現在に至る。

  • 趣味:考えること
  • 特技:ドラム(最近叩いていない)
  • 好きなもの:ドリトス、ドリフターズ、
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