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スキンケアブランドの新規ブランド開発 その2

仕事
Oct 25,2024

前回新しく世の中にデビューするスキンケアブランド開発の話を書いてから、相当な時間が経ってしまいました。

調べてみたら、2021年の11月にアップしているので、今からちょうど3年前ということになります。

いや、早いなぁ

その記事の最後に、次はプランのプロセスについて紹介するって書いていながら、すっかり時間が過ぎてしまって、作る工程を紹介できないままになってました。

今日は改めてその記事の続きについて書きたいと思います。

前回の記事はこちら

↓↓

https://www.dig.co.jp/blog/danwashitsu/2021/11/-1-1.html

世の中に発表する新スキンケアシリーズのブランド開発を手がけました。
まず、最初に皆さんに問いたいのですが、女性が使うプロダクトを男子(おじさん)がプランニング&デザインできると思いますか?
何度か紹介しているデザイン思考(design thinking)のフレームワークを使えれば、それは可能だという結論になります。
ターゲットユーザーの心理を深く深く探求し、理解し、ターゲットになり切り、ターゲットが共感するレベルまで掘り下げれば、理論上は可能ということです。
3年前は、ターゲットである40代の女性のライフスタイルをクラスター分類する手法を紹介しましたが、今回はそこから実際に行った制作プロセスを具体的事例で紐解いていきたいと思います。
松本オリジナルのデザイン思考のフレームワークです
以前も紹介しましたが、既に世の中にあるデザイン思考をベースに、オリジナルとして考案したフローを用いた制作プロセスを紹介します。
アメリカで生まれたデザイン思考と、イギリスからやってきたダブルダイヤモンドの考え方、
この2つを組み合わせて、自分のオリジナルとして考案したデザイン思考を制作の現場で活用しています。
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松本オリジナル デザイン思考の6項目

1.情報分析
2.ニーズ・共感
3.課題定義
4.仮説・アイデア
5.プロトタイプ
6.テスト
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前回紹介したクラスター分類は、2番目のターゲットに対するニーズと共感のフェーズに該当します。
別の表現を用いると、マーケティング用語ではありますが、インサイトの発見ともいえるものです。
ダブルダイヤモンドのように拡張と収縮を繰り返しながら、アウトプットの精度を上げて行くプロセスは、プロダクトデザインだけでなく、グラフィックを含め多くのデザイン領域に適用できる考え方だと思います。
事実そのように自分も取り組んで進めています。
課題発見と課題解決、どちらが重要かと言えば、個人的には圧倒的に課題発見が重要だと考えています。
課題発見が間違っていれば、当然解決方針がズレてしまう。
課題の定義をどこにするか、何にするかにより、解決するゴールも変わります。
だからこそ、何を課題として定義するかが最も重要なフェーズです。
特にその中でも、2のニーズ・共感と、5のプロトタイプ、2つの関係がカギです。
ニーズ・共感の深さこそが、プロトタイプの精度を決定すると思います。
アメリカとイギリスの考え方をミックスした自分的制作フロー。
アウトプットのフローの説明に入る前に、商品の特性を説明しておきます。
クライアントから依頼された新しくデビューするスキンケア商品は、以下のようなものです。
自然界から採取した粘液成分が入っている。
粘液が肌の持つ本来の力を蘇らせるアンチエイジングの効果をもたらす。
肌に良い天然成分を厳選して作られた、高機能、高濃度の商品という特徴がある。
などの説明を受けました。
ペルソナは、42歳女性、既婚で子供は10歳、品川区在住で人に会う仕事、ブランド好き、ヨガピラティスに通っている、手取り20万から毎月1.5万をスキンケアにかける女性とのことでした。
この情報だけを渡されて最初に何をすべきか?
あなただったら何をしますか?
新ブランドはモードでちょっぴりフェミニンなブランドという世界観に。
1.情報分析
ニーズを整理して分析する。関連する情報を調査する
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●ターゲットに合うスキンケアブランドを調査する
・肌の悩みを抱える40代に直接聞く
・サイトで検索する
・百貨店のコスメ売場に行く
・ターゲット世代が読む美容雑誌を見て調べる

●市場のカテゴリー分類の軸で調べる
・デパートコスメ、通販コスメ、ドラッグコスメの違い
・国産、インポートの違い
・オーガニック認証取得、日本市場の調査
・ライフスタイル、トレンドとの親和性
・プライス別でのセグメント、競合の調査

●ブランドの強みをさらにクライアントにヒアリングする
●ボトル、カラー、ロゴのヒューリスティック調査
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これらの調査をすべて自分で行いました。
その中でも特に、新宿伊勢丹の地下にあるビューティーアポセカリーに赴いて、オーガニックコスメを調査するのが大変だったなー。
店員の人に今売れているベスト5の商品をすべて案内してもらい、その特徴を聞き出し、パンフレットをもらって熟読。
こんなオジサンが女子向けのスキンケアについて詳細にヒアリング調査するのは、マジで怪しいw
でもそんな怪しいオジサンにも嫌な顔1つせず、丁寧に説明してくれたスタッフの方は素晴らしいです。
さすが百貨店。天下の伊勢丹。
Best3は、1位ヨンカ、2位ニュクス、3位フランシラということがわかりましたが、もちろん1つも知らないw
オーガニック市場では、企業としてACRO(three)、Marks and Webの商品が売れていることもわかりました。
拡散と収縮を繰り返しながら、アウトプットの精度を上げる。
2.ニーズ・共感
ユーザーの行動を理解し、マインドレベルまで深く探る。
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●ターゲットのマインド指向を探る
・ターゲットが抱える悩みの種類
・スキンケアを使う際に起こる内面の動き
・ターゲットの行動属性との関係分析

●40代女性をライフスタイル別にカテゴリー定義する
このクラスター分析を前回のブログ記事で紹介しました。

https://www.dig.co.jp/blog/danwashitsu/2021/11/-1-1.html

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このフェーズでは、ユーザーがスキンケアを行う背景について掘り下げてみました。
その結果、ハリがない、ツヤがない、目元の小じわ、シミ、乾燥が気になる、などの悩みがあることがわかりました。
そうした見た目の加齢による変化だけでなく、もっと深いところにあるマインドに着目すること。
内面の欲求があるはすです。
自分に自信がない、もっと前向きに生活したい、心の充足、自ら変わりたいと感じているなど、スキンケアという表層的な行動を通して、深いところでは心理的な充足を求めていることがわかってきました。
ネガティブな要素を改善する機能を求めるのは当然ですが、前を向くために日々スキンケアを行っているのでは?ポジティブな心の拠り所、共感を求めているかもしれない。
それがこのフェーズを通してわかったことでした。
この気づきがブランド全体のコンセプトになっていきます。
拡散のピークはユーザーのニーズを探るフェーズです。
3.課題定義
本質的なユーザーの課題を定義する。
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●コンセプトを定義する
・ターゲットの具体的な絞り込み
・ブランド名の開発
・ブランドスローガンの考案
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ブランド名は、既に決定していた名称をクライアントから伝えられていました。
しかし、どうもしっくりこない。
そのため、その名称をそのまま使用するのではなく、日本語の響きはそのままに、アルファベットの並びを変えて、その意味合いをこちらから再度提案しました。
COSS=Change, Origin Sympathy Skincare
ここに「ニーズ・共感」フェーズでわかったこと、ターゲットが深いところで求めているSympathy=共感というワードを入れました。
Sympathyには、心の内側で感じる、共感する、思いやりがあるという意味があります。
COSSを使うことで、自分の肌が共感する、自分自身が好きになる。
それにより、自信を持って明るく前向きになって欲しいという開発者の想いをネーミングにも込めました。
この提案が採用されてブランド名が決まります。
ブランドスローガンとキービジュアルを定義
ブランド名に合わせて、スローガンの定義も行いました。
ブランドスローガン「肌が変わる、わたしが変わる、共感するスキンケア」
リードコピー「生命美の鍵、粘液ゲル。よみがえる、ハリとツヤ」
この「ゲル」という表現が、先方が一番こだわっている、またブランドの核となる天然成分です。

あわせて、40代女性のライフスタイル調査の結果、ターゲットを絞り込むことも行いました。
具体的には、モード志向を持った高感度なコンサバカジュアル層を狙う、つまりアーリーマジョリティから少し突出したアーリーアダプターをコアターゲットに定めました。
その層と親和性の高いファッション、インテリア、ブランド、嗜好性も定義しました。
シンプル、ノームコア、アスレジャー、シャビーシック、フェミニンというキーワードも抽出しています。
ここまでが課題の定義で行なったことです。
MAXまで拡散した思考を1点に絞り込んでいく。
課題が定義されたら、その課題を解決するための具体的なアイデアを拡散するフェーズに移ります。
繰り返しになりますが、ここまで説明した課題発見の3つのフェーズのうち、最も重要なパートは2つめの「ニーズ・共感」にあると思います。
課題定義を明確にすることで、ストーリー全体の矛盾をなくす、同時にクライアントへの説得力も上がると思われます。
そして説明可能なデザインが実現され、そこにリアリティが生まれる。
また、このフェーズ以後の提案が採用されなかった場合でも、どのフェーズまで戻る必要があるのか?
ターゲット設定か、ターゲットのインサイトか、その道しるべにもなると思います。
要は、論理的な道筋を立てることが、やり直しを可能にするプロセスにつながると考えています。
次回は課題を解決するフェーズを紹介します。
さて、プロジェクトは課題定義まで進んだので、次の記事では課題解決について説明したいと思います。
ここまでが「カチのデザイン(思考のデザイン)」、次から「カタチのデザイン」に踏み込んでいきます。

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松本知彦 Tomohiko Matsumoto

東京新宿生まれ。
漫画家の父親を持ち、幼い頃より絵だけは抜群に上手かったが、
働く母の姿を見て葛藤し、美術を捨てて一般の道に進むことを決意。
しかし高校で出逢った美術の先生に熱心に説得され、再び芸術の道に。
その後、美術大学を卒業するも一般の上場企業に就職。
10年勤務ののち、またしてもクリエイティブを目指して退社独立、現在に至る。

  • 趣味:考えること
  • 特技:ドラム(最近叩いていない)
  • 好きなもの:ドリトス、ドリフターズ、
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